東京高等裁判所 平成8年(ネ)705号 判決 1996年9月11日
主文
本件訴訟を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは控訴人に対し、各自、金一五万円及びこれに対する昭和六〇年九月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(控訴人は、当審において、右のとおり請求を減縮した。)
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
4 2項につき仮執行宣言
二 控訴の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二 当事者の主張
当事者の主張は、原判決の事実及び理由欄「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
第三 証拠(省略)
第四 当裁判所の判断
当裁判所も、控訴人の本件請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり改めるほかは、原判決の理由説示(第三 争点に対する判断)記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決三枚目表九行目の「一九」の次に「二二ないし二四」を加える。
2 同五枚目表七行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「4 本件記事が下野新聞に掲載された当時、被控訴人下野新聞社は、下野新聞に掲載された記事についての閲覧、謄写のサービスは行っていなかったものの、閲覧、謄写の申込みに対しては、地元の栃木県立図書館をはじめとする県内各市町村立の図書館、教育施設が下野新聞のバックナンバーを揃えており、栃木県立図書館等において閲覧、謄写のサービスを行っているので、これらの施設を利用されたい旨一律に回答していた。そして、少なくとも栃木県立図書館では、当時から掲載紙、掲載年月日、記事の内容が特定されれば申込者に対し当該記事のコピーを郵送するサービスを行っていた。」
3 同五枚目表八行目冒頭の「4」を「5」に改める。
4 同五枚目裏四行目の「ところで、」から同九行目の「いうべきである。」までを次のとおり改める。
「 ところで、民法七二四条にいう「損害及び加害者ヲ知リタル時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知った時を意味するものと解するのが相当であり(最高裁判所昭和四八年一一月一六日判決・民集二七巻一〇号一三七四頁)、被害者に現実の認識が欠けていたとしても、その立場、知識、能力などから、僅かな努力によって損害や加害者を容易に認識し得るような状況にある場合には、その段階で、損害及び加害者を知ったものと解するのが前同条が短期消滅時効の起算点に関する特則を設けた趣旨に適うというべきである。」
5 同六枚目裏初行の次に行を改めて次のとおり加える。
「 平成四年七月九日の時点で、控訴人が被控訴人下野新聞社に対し、本件記事のコピーの交付を郵便で申し入れたとすると、当時、被控訴人下野新聞社は栃木県立図書館等で閲覧、謄写のサービスを行っている旨の教示をしており、事実、少なくとも栃木県立図書館では、掲載日時と記事の内容の指定があれば、何人に対しても記事のコピーの郵送に応じていたから、控訴人が自らあるいは支援者たる知人を通じて同図書館に本件記事のコピーの郵送を申し入れ、これを入手することは容易であったものと認められる。」
第五 結論
よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(編注)第1審判決及び第2審判決は縦書きであるが、編集の都合上横書きにした。